弁護士コラムcolumn

【弁護士コラム】共同親権制度

2024.05.24

77年ぶりの改正

共同親権制度の導入などを内容とした民法改正案が先日参議院でも可決されました。

2026年ころには施行される見込みです。

もちろん法案成立にあたっては色々な面から審議がされたはずですが、離婚に関わる紛争に携わる当事者としては、正直な感想として、「もう成立したのか、大丈夫かな」と思っています。

なお、個人的には、共同親権制度を導入することそのものについては、ポジティブです。

単独親権制度であるが故の問題点があることは否定できず、共同親権制度が導入されることによってその問題点が一定程度解消されると期待するからです。

単独親権制度

現行の制度(HPもご覧ください。https://kanedalaw.jp/custody/)では、離婚をする場合には子の親権者を父母のどちらか一方に定めなければならないとされています(民法819条)。

協議離婚の場合、子の親権者をどちらか一方に定めない限り離婚できない、ということになります。

もちろん理性的に話し合いをして親権者を定めて、離婚後の面会交流についても有意義に実施されている方々も多くいらっしゃると思いますが、そうではない方々もおられ、様々なお困りごとを抱えて私たちのところに相談に来られます。

なぜ揉めるのか

感覚的には、子の親権について争いがある場合は財産についてのみ争いがある場合よりも、感情的な対立が強く出てくるように思えます。

あくまで私の個人的な考えですが、その理由は大きく分けて2つの感情があることによると思っています。

1つは、当たり前のことですが、誰でも自分の子がかわいくて一緒に過ごしたいからこそ、絶対に譲ることができないとなる思いです。

もう1つは、自分が親権を譲るということは良く思っていない相手方の思い通りになるという事であり、そんなことは絶対にしたくないとなる思いです。

前者は、思いの先が子に向いていて、後者は思いの先が夫婦の相手方に向いていると言うことができます。

たとえば後者の思いが前者を上回ると、話し合いをせずに子を連れて別居するとか、非監護親を子に会わせないとかという行動につながっていくでしょう。

私は、この2つの思いは多かれ少なかれ誰でも持っているもの、いつでもそういう感情になってしまうものだと思っています。

そして、相反する感情ではなく、常に同居する感情で、そのバランスが崩れたときに紛争になるものだと思っています。

今回の民法改正案の考え方

現行民法に比べて改正案は、子の心情や環境に配慮する意図がはっきりと条文に表れています。

現在でも親権や面会について考えるにあたっては子の心情や環境に配慮することが大切とされていますが、それを条文に明確に表示することによって、一層強く意思表示をしたものと言えると思います。

そして、さらに言えば、改正案には、子の心情を親の心情(感情の対立)よりも優先させても良いのだという発想が見えます(※個人の感想です。悪しからず。)

先ほどの2つの感情の、前者をより重視していると言えます。

今後どうなっていくのか

改正法が施行されたとして、おそらく実際の運用は裁判所に任されるところが大きくなると思います。

改正案の成立前から現在でも賛成派、反対派から色々な意見が出ているところですが、実際の運用もこれまでと突然大きく変わるとは思えず、少しずつ変わっていくのかなと予測しています。

私個人としては、制度が良いとか悪いとかではなく、先ほども申し上げた通り、もともと存在する2つの感情のどちらを重視すべきかという問題だと思っていますし、誰もが持っているであろう「子を思う気持ち」が大事だという否定しがたい命題を推し進めていけばよいと思っていますので、全体としては悪い方向にはいかないのではないかと信じております。

もっとも、自分の優先順位を下げるということはそう簡単にできることではありません。

難しいことですが、当事者それぞれが、離婚・親権という問題を、自分事というよりは「子供事」と捉えるという発想の転換が必要なのかもしれません。

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