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【弁護士コラム】法定養育費制度について

2025.09.03

法定養育費とは

先日、法定養育費の額を月2万円とする省令案が公表されたという報道がありました。

これは、先般の民法改正で、事前に養育費について取り決めをすることなく離婚したケースで、実際に取り決めができるまでの間、暫定的に一定の金額を請求できる制度が定められたことを踏まえたものです。

2万円という金額は、子どもの最低限度の生活を維持するために必要な金額で、と説明されています。

もっとも、この省令案については今月から行われるパブリックコメントを経て必要な改正が行われる可能性があるものです。

 

養育費の金額の相当性

親は、未成熟子(まだ経済的に自ら独立して生計を維持しているとは言えない子)について、自己の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務を負うと理解されています。

離婚後における生活保持義務のあらわれが養育費です。

生活を保持するためですので、養育費として支払われるものの中には、生活に関わる様々な費用(食費、居住費、日用品費、教育費など)が含まれることになります。

他方で、支払う側としても、自身の生活がありますので、得た収入を自身を除く者の生活に充てる限界があります。

その調整を図りながら養育費として相当な金額を算出するべく定められたのが、裁判所で用いられる改定標準算定方式(いわゆる算定表)です。

2万円という金額

今後変更になる可能性があるものとはいえ、一旦政府から2万円という案が出てきたということは、十分な検討と各方面への配慮がなされたものなのでしょう。

おそらく2万円で子どもの最低限の生活を維持することができるかと言うと、実際には(特に現に子どもを養育されているお父さんお母さんは)色々な思いを持つと思います。十分多いと思われる方よりは、少なすぎるという意見の方が大勢かもしれません。

あくまで個人的な感覚ですが、2万円というのは、支払う側ともらう側の収入がだいたい同じで、かつそんなに収入が多くない(平均年収と同じかそれを下回る程度)ケースで算定表上導き出される数字という感じです。

今後も議論がされていくことと思いますが、ここでは2点指摘しておきたいと思います。

1つは、先ほども書きました通り、養育費というものは支払う側ともらう側の利害を調整する必要があるものだということです。したがって、もらう側に100%の満足をもたらす金額になることは、そもそも難しいと言えます。

もう1つは、離婚後に子どもを養育するお父さんお母さんを援助する制度は養育費だけではありません。国や地方自治体が税金を用いて行う援助を受けることもできます。

いずれにしても、親の離婚によって子どもが必要以上に経済的なデメリットを受けるべきではありません。

法定養育費の制度も公的な扶助の制度も大事ですが、一番大切なのは、当事者である親の子供を思う気持ちだと思います。

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